土曜日なのに生物部の中学生が理科棟に飛び込んできました。MIGAKUアカデミーの活動でノコギリクワガタをもらったらしい。小学生の頃、私はこのノコギリクワガタが大好きでした。当時の子供は自分の飼っている昆虫を闘わせるという遊びをよくやっており、そうなるとカブトムシや他のクワガタムシより断然ノコギリクワガタの対戦が楽しいのである。飼っている昆虫で友達と対戦すること…ポケモンのバトルのルーツはこれではないか、と私は想像しています。
さて、クワガタムシ類の雄にみられる大きな「角」のような構造、これは正しくは「大顎」(「おおあご」または「だいがく」と読まれます)です。節足動物の体は複数の「体節」から「付属肢」が発達することができるデザインになっています。節足動物は体節によって付属肢を大きく発達させている場合もあれば、特にその構造を持たない場合もあります。昆虫の場合、肢が3対6本というのは誰でも知っている特徴ですが、これは胸部の3つの体節の付属肢を特に発達させ、地上を移動するときはこれを利用することを基本的なフォルムとしていると言えます。あまり知られていないかも知れませんが頭部にも付属肢があり、昆虫では、それらは触角と顎になっています。そのうちの1対が大顎なのです。以上の話については足の概念を脊椎動物の場合と切り離して考えてください。(「足」ではなく「肢」と表記しておきました)また、顎についても同様で、ヒトの顎とは別物で、口器を構成するパーツみたいに考えてください。
付属肢が体節によって異なる構造となるのは遺伝子発現の制御による結果です。高校で生物を履修している人はホメオティック突然変異の一例である「アンテナペディア」について思い出してみましょう。
【問題】昆虫の大顎は種類によって形態がかなり異なります。それぞれの大顎を比較し、その機能を考えてみましょう。
「昆虫の大顎の利用方法は摂食、闘争、巣作り、脱出そして捕食者から逃れるための防御など非常に多様で、種類によって大きく異なる…」とAIは説明してくれています。クワガタムシ類の場合は餌場あるいはメスに近づいてきたオスを排除するために利用され、つまり闘争用と考えていいでしょう。ノコギリクワガタの雌の大顎は大きく発達していません。
昔の小学生はそんなことを知らずとも、昆虫の「バトル」を楽しんでいたんですね。まずは経験し、その後で経験を統合する知識へと広げること。忘れたくない学びの視点です。
【キーワード】 大顎 付属肢 ホメオティック突然変異
余談:小学生の頃、私たちはノコギリクワガタのことを「水牛」という通称で呼んでいました。地方によっていろいろな昆虫に通称があるようです。そんな情報をお持ちの方、ぜひ教えてください。











