みなさんへのメッセージ~理事長対談~

Interview

対談4モンベルグループ代表・登山家:辰野 勇氏 自分の「好き」へ進み続けること、それは未来の糧となる。

大事なのは、意志と行動のバランス。

モンベルグループ代表・登山家 辰野 勇氏と本学理事長:奥田
モンベルグループ代表・登山家 辰野 勇氏と本学理事長:奥田

辰野
すべての道は、自分の選んだものだと思うんです。例えば誰かに言われたからやった、という事情があったとしても、最終的には自分が選んだ道になる。であれば、楽しいと思う方を選んでほしいな、と。

大人になると、「こないだの日曜は何してた?」と訊いたら「いやぁ、子ども連れてスーパーに買い物ですわー」なんて卑下したように言う人がいますよね。
「おまえな、もうちょっと胸をはって『スーパーで子どもと楽しんできました!』ぐらい言いな!」って。
だって誰かに話をするときに、スーパーは卑下で、レジャーに行ってたら幸せ、って変じゃないですか。その瞬間も全部、自分が選んで行動したんやろ、って。

モンベルをたった一人で46年前に興して、今は多くの社員を抱える会社になりましたが。
この前、四国にある小売店のオーナーが、「辰野さん、会社すごく大きくなりましたね」「一人でやっていたときから見ていたけど、これからどうするんですか?」って心配してくれたんです。
これから先を訊かれても、すこし困ってしまうんですが。
こういう場合のちょっとしたコツで、「How about you?」って訊き返すんですよ。あなたはどうするんですかってね。
そしたら時間を稼げるでしょう?
だいたい、質問には期待している答えがありますよね。でも「どうするんですか?」ではあまりにも答えの幅が広すぎる。
だから訊き返してみたら、「私は四国で小さなアウトドアショップをやっています。日本で一番なんて大それたことは考えないけれど、四国で一番のお店になりたいと思っているんですよ」って、そのときのオーナーは答えてくれました。
「そっか、この人はそんなことを考えてるんやな」と。だから私は「俺は世界で一番かな!」って返しました。

これ、実は会話が全然成り立ってないんです。オーナーさんが話した“四国で一番”って、売り上げが一番だとか、そういうイメージですよね。
私は“世界で一番幸せな会社”という意味で答えたんです。改めて言うとちょっと恥ずかしいですが。
四国で一番、日本で「売り上げが」一番の会社を作ったって、いつ他者に抜かされるかと怯えながら走り続けることになる。そんなんは嫌やな、と。
でも“世界で一番幸せな会社”って、今からなれるんですよ。だって自分がそう思っているだけでいいから。

奥田
先ほどの価値観を明確にするお話にもつながりますね。大事なのは「自分が何を大切にするのか」、それを明確にすることが、明るく生きることにつながっている。
私たちも、なんでも一つの価値で子どもたちを計るのは、やめたいと思っているんです。
そういう意味で、先生たちの「子どもを評価する能力」というのは本当に高くなきゃいけないと思っています。
自分の価値観をもつことについてのお話は、ぜひ子どもたちにも伝えたいですね。

辰野
ただ、誤解される話でもあるんですよ。さっきの新入社員の彼みたいに、「辞める!」なんて言い出す人が出てくる場合もありますし。

私はアイガー北壁に挑戦するにあたって、お金を貯めました。お金が無かったら何もできないですよね。
会社経営に例えるなら、いくら良いことをやっていても、経済バランスがとれていないと早晩潰れてしまいます。逆にいくらお金儲けが上手でも、社会のためにならないことをやっていれば、これも長くはもちません。
車の両輪みたいに、経済バランスと事業内容っていうのはそういうものだと思います。
実はこれは会社だけじゃなくて、個人でも何でも、全部そうなんです。

山登りにだって同じことが言えます。
山男って言うのは、実は怖がり。いつも「こうなったらどうしよう」と考えている。先々のことを考えるリスクマネジメントですよね。
それと同時に、例えば2人で山を登るとき、まず自分の安全を確保するんです。そうじゃないと、いざというときに相手を助けられないから。
自分が安全なところにいて、初めて相手を助けられる。だから自分の足場の確保はしっかりと行うんです。
想いだけで「困っている人を助けよう!」というのは、いいんだけれど、その前に自分の足元をちゃんと固める必要がある。このバランスが大事なんです。
「バランス」、これは人生のキーワードですね。

奥田
良い言葉です。やりたいことに向かって進むだけが良いことではなく、現状を見つめるだけでも良くない。両方に目を向けることができて、初めて目標の実現に近づける、ということですね。
こうして色んな方のお話を聞いていると、たくさんの素敵な言葉に出会えて、新しい考えに触れることができて、とても幸せだなと感じます。

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